研究課題
ヒトには音の変化を自動的に検出する機構が備わっているが、その基盤にある感覚記憶は一次聴覚野近傍に発生源を持つMMN反応に反映される。我々は、背景音の様々な要素の膨大な情報が、時間統合機構によって約160-170msの時間方向の神経表現として、感覚記憶に符号化されている事を示してきた。またこれまでの研究から、脳の感覚記憶に符号化され記憶された(神経的に表現された)Auditoryscene(聴覚情景)の中に流れる時間は、現実世界の時間の流れとは異なっており、符号化された情報としての時間は、現実世界の時間の規則に従う必要性がなく、脳皮質に神経的に表現された聴覚世界の中では時間の流れが異なることを示してきた。これまで、統合失調症患者では、感覚記憶の時間統合窓の後半部分での障害が顕著に認められること、つまり感覚記憶に保存された聴覚情景の中の時間の障害が存在する可能性が高いことを示してきた。この現象は、知覚の変容や認知反応の減退に強く関わっていると推測された。本研究では、優れた時間分解能を有する脳磁図や脳波を使用して、健常者において神経的に表現された時間の様態とともに、感覚記憶の時間統合機能の障害が認められる統合失調症において研究を行った。本年度は研究1年目に当たったが、感覚記憶における聴覚情景の中の時間現象の一部の結果について学会報告を行った。
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