1.研究目的 ・MRIで評価した中枢神経系構造に与えるNRG1(rs6994992)、BDNF(rs6265)、DISC1(rs821616)、COMT(rs4680)、RGS4(rs951436)、YWHAE(rs28365859)遺伝子多型の影響を検討した。 2.研究方法 ・健常者40名と統合失調症40名を対象として、MRIを撮像してvoxel-based-morphometry法(VBM法)により灰白質の体積を検討した。また、対象から得たゲノムを用いて上述した各遺伝子型を決定し、遺伝子型が各領域の体積に与える影響を検討した。統計処理では年齢、性別、全脳体積の補正をした上で、2群のGM体積を比較した。患者群において健常群よりも有意に体積の減少している領域のGM体積値を従属変数とし、各遺伝子のリスクアレル数を独立変数とした重回帰分析を行った。 3.研究結果及び考察 統合失調症群では前頭葉、視床、島、扁桃体などを中心とした広範な領域において、健常群よりもGM体積が有意に減少していた(p=0.001 uncorrected)。中でも外側前頭前野、内側前頭前野、島、視床のGM体積の差は、多重比較補正後も有意であった。これらの4領域および両側扁桃体のGM体積と遺伝子多型を用いた重回帰分析では、BDNF、COMT、YWHAE、NRG1において有意な結果が得られた。BDNFは海馬や扁桃体において分泌され、NRGも神経発達に関与しているとされている。これら遺伝子のリスクアレルとGM体積に関係があったことは、統合失調症の神経発達障害仮説を指示する結果と考えられる。COMTが扁桃体と、YWHAEが島のGM体積とそれぞれ正の相関があったが、これらの関係については今後検討することが必要である。
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