研究課題
高齢化社会を迎えた現在、認知症の病態メカニズムの解明とそれにもとづく早期診断・治療法の開発は緊急の課題である。その中で、前頭側頭型認知症(Frontotemporal dementia:FTD))は頻度も少なくないことが判明し、その対応への重要性は増大している。FTDでは1998年に17番染色体に関連するものはタウ遺伝子変異によって発症していることが判明してから、神経変性性認知症疾患の原因としてタウ蛋白の重要性があらためて位置づけられた。さらに、ここ数年の研究において、第3,9,14、17番染色体に存在する家族性FTDについても精力的に精力的に検討されてきた。この家族性FTDに関与しているタウ、TDP-43はユビキチン化産物であり、またCHMP2B、VCPはユビキチン結合蛋白あるいは結合複合体に関与するものであることから、ユビキチン化された基質が適切に処理されないことがこれらの疾患における神経変性のメカニズムであると推定される、そこで、まずタウ蛋白の分解機構にユビキチンシステムがどのように関与しているかに関して検討をおこなった。神経系細胞SH-SY5Yを培養し、プロテオソーム、カテプシン、カルパイン、ピューロマイシシ感受性ペプチダーゼのそれぞれに対する阻害剤を培地に添加したところ、プロテオソーム阻害剤を添加しても分子量の増大したユビキチン化タウの増加は確認できず、またユビキチン化修飾を受けないタウ蛋白量も有意な増加が認められなかった。使用した阻害剤の中で有意に蛋白がタウ蛋白が増大したのはピューロマイシンのみであった。実験の結果およびピューロマイシン感受性ペプチダーゼはエクソペプチダーゼであることから、タウ蛋白の分解には複数の経路が存在し、1つの経路を抑制すると他の経路が分解を代償し、律速段階として寄与する経路はピューロマイシン感受性ペプチダーゼによるものであることが示唆された。
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