研究概要 |
(1) この1年間に健常者を含む物忘れ外来患者に、MMSEは231例、ADASは221例に(44才から91才、平均76才)実施し、新規登録した。心理検査で健常、軽度認知障害(MCI)、認知症と臨床的に診断し、同意を得られた症例に、アミロイドペット(PIB-PET)、髄液バイオマーカー、アポE遺伝子検査を実施した。小脳を基準としたPIB取り込み(SUDVR)とMMSEの相関係数は-0.334(p<0.05)であった。運動神経障害を伴う認知症ではPIB-PETは陰性で、PIB-PETが鑑別に役立つ事を示した(雑誌論文2、学会発表2 ,3, 5, 6)。また、PIB陰性群は陽性群に比べ、髄液p-tauが有意に低値で、Aβ1-42が有意に高値(p<0.05)であり(雑誌論文1)、PIB-PET検査が認知症の鑑別や病態解明に役立つことが明らかになった。(2) 平均MMSEが27点のMCI患者(PIB-PET陽性率78.9%、アポE4陽性率75%)を1.5~2年の観察期間中に、PIB取込の有意増加(10%以上)は、PIB陽性群で35.7%、陰性者ではなかった。PIB陰性群で、取り込み増加が見られないにもかかわらず認知症に移行した症例が複数あり(学会発表1)、PIB陰性のMCIでも認知症に移行することから、PIB陰性の認知症の病態をさらに解明する必要があると思われる。(3) 糖尿病患者では、正常域が71%、MCI域が5%、認知症域が23%で、対照群に比べ、認知機能低下者の頻度が高かった。リバーミードとHbA1cの間には軽度の相関関係を認め(r=-0.21)(雑誌論文3)、糖尿病が認知症リスクであることが明らかになった。(4) 試験的に、2症例に0.4g/kg/月のガンマーグロブリンを試験的に3カ月投与し、その前後でPIB-PETの変化を評価するも、変化は捉えられなかった。
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