研究概要 |
本研究の当初目的は、網羅的遺伝子発現解析と全ゲノム関連解析から探索同定された新規ナルコレプシー(過眠症)関連遺伝子と、病態関連が想定される候補遺伝子について、白血球中の遺伝子発現および血中産物量を指標として、疾患特異的な発現・産物量変化を示す遺伝子を見出し、診断指標への臨床応用を図ることである。 今年度は研究協力者をさらに募り、HLA遺伝子型タイピングの上、ナルコレプシー44例(全例HLA-DQB1*0602陽性)、年齢性別HLA型を一致させた対照群34例、HLA型陰性対照群24例を選択して、新規同定遺伝子(IGFBP3,ILIRL1など)および候補遺伝子(オレキシン受容体,HLA-DQB1*0602遺伝子など)の発現定量を行った。HLA-DQB1*0602陽性群と陰性群との比較では、昨年度見出した過眠症関連遺伝子MX2の他、COMT等の発現に有意差が見出されたが、ナルコレプシー群とHLA型陽性対照群の比較で疾患特異的変化を示す遺伝子は見出せなかった。HLA遺伝子自体の関与を検討するため、HLA-DQB1*0602定量を含むHLA遺伝子の検出実験系を確立して発現定量を行った。HLA陽性群でHLA-DRAは1.3倍、HLA-DQB1全体は2.5倍と有意な発現増加が観察されたが、疾患特異性は見られなかった。HLA発現量が状態像特異的な変動を示す可能性について予備的に諸因子との関連検討を行ったところ、精神刺激薬服用との関連が示唆され追加検討中である。 また全ゲノム関連解析から同定されたCPT1B遺伝子発現量が、遺伝子型のみならず疾患特異的な変動を示すことを見出し、さらにCPT1分子の反応産物である血清アシルカルニチン量が、疾患特異的に低値を示すことを見出した。今後過眠症の新たな病態指標となりうる知見で、現在投稿準備中である。
|