研究概要 |
今日、遺伝子工学の進歩により種々の疾患動物モデルが開発され、これらモデル動物を用いた基礎医学的研究や新しい治療法の研究が行われ始めている。我々は、非放射性標識化合物で、SPECTと同様な画像が得られる蛍光X線CT装置(FXCT)を世界に先駆けて開発してきた。現在では、生きたマウスの脳血流の画像化にも世界で初めて成功している[Proc.SPIE 5535:380,2004,Nucl Instrum Meth A 548:38,2005]。麻酔下(1時間)の動物実験で得られたFXCT画像の容積分解能は0.1mm^3で、従来の手法では到底到達できない0.25mmの空間分解能の画像が得られる可能性を示している。FXCTを実用レベルの技術として使用するには、短時間で撮影が不可欠である。そのため、開発初期に採用した第一世代のCTのようなペンシルビームによる撮像法ではなく、シートビームで撮影を行えるFXCTの基礎研究を開始している。本研究では、新しいデータ収集法で画像データを得る事が可能な、実用前段階の蛍光X線CT装置を製作する。 本年は、先行研究で作製した蛍光X線検出用の3素子Ge半導体検出器と透過X線CT検出器のデータを同期しながら収集できる高速エレクトロニクス装置を購入し、さらにデータ収集と試料の駆動が対応して動作するためのソフトウェアを開発した。本装置でファントム及び固定生体試料を撮影し、シートビーム法で鮮明な標識物質に含まれるヨウ素分布画像を得ることに成功した。シートビーム法では、散乱線の除去が問題となるが、検出器側のコリメータ3個を試作し、特性評価を行った。空間分解能と感度を加味した最適なコリメータを使用し、目的とする0.25mmの空間分解能の画像を得ることにも成功した。現在、高速エレクトロニクス装置の速度をさらに高めるための検討(制御ソフトの改良)を行っている。シートビームを作るためのスリットシステムを作製し、シートビーム形状について基礎的な検討を行った。
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