研究課題/領域番号 |
19390323
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
晴山 雅人 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10173098)
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研究分担者 |
安達 正晃 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (70240926)
坂田 耕一 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (10235153)
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キーワード | 放射線感受性 / DNA障害 / ヒストンメチル化 |
研究概要 |
放射線治療は、癌治療における主役のひとつを担っているが、必ずしもすべての癌で照射効果の期待ができない場合がある。また、照射後の副作用によって様々な生理機能を損なう場合もある。これらの課題に対し、放射線感受性を生物学的に解明し、それを改変させることが、問題の解決につながる可能性がある。本研究では、こうした観点から、放射線照射のターゲットであるDNAの3次元的な構造へ影響を及ぼすヒストン構造に着目し、その修飾の違いと放射線感受性とのリンケージを解析した。今年度は、ヒストンメチル化酵素Suv420H2をノックダウンし、ヒストンのメチル化レベルを低下させ、放射線感受性を解析した。Suv420H2は、ヌクレオゾーム内に存在するヒストンH4のリジン20をメチル化する酵素である。複数の細胞株において、メチル化を減弱させることによって明らかに放射線感受性が変化した。すなわちメチル化が低下すると、ヒストン構造が変化し、放射線への感受性が高まるらしい。このことから、ヒストンメチル化レベルを変化させることによって、放射線感受性が改変しうることが明らかになった。本研究では、さらにこの現象が生体内で生じることを証明するために、持続的に遺伝子をノックダウンさせるベクターを構築した。Suv420H2とともにメチル化を制御するSuv420H1をターゲットとするsiRNAを組み込んだ遺伝子ベクターを導入し、放射線感受性を解析したが、これまでのところ、明らかな効果は得られず、うまくターゲット遺伝子の発現を抑制できていないことが判明した。 本研究の成果によって、ヒストンのエピジェネテックな調節により、放射線感受性を人為的に改変しうる可能性を提示できた意義は高い。今後はこれを発展させ、放射線治療にうまく組み込む手段を考案し、研究を発展させるべきと考えている。
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