研究課題
放射線治療に対する応答には個体差が存在し、治療効率を向上させるには腫瘍の放射線治療に対する感受性を予測する必要がある。本研究では子宮頸癌を対象に放射線治療効果予測因子を同定するために患者血液を用いてバイオマーカーの探索と検証を行った。放射線治療を施行した進行期子宮頸癌の初診時に採取した血清を用いてプロテインチップにより検討した。パイロットスタディとして6例の正常女性、18例の進行期子宮頸癌(治療効果良好群11例、不良群7例)の血清を使用した。得られたプロテインチップについて、ProteinChip SELDIシステムModel PBS II Cを用いて、SELDI-TOF-MSにより各分子量に対する相対強度チャートを得た。得られた相対強度チャートをPMF解析とMS/MS解析を用いてApolipoprotein C-II(ApoC-II)を同定した。さらに9例の正常女性、28例の子宮頸癌(良好群18例、不良群10例)の血清を用いてプロテインチップと免疫比濁法で再現性を検証した結果、ApoC-IIは治療効果不良群に有意に減少して発現し、プロテインチップと免疫比濁法に相関が見られた。免疫比濁法で良好群と不良群を比較し、不良群におけるApoC-IIの発現は良好群に比較して減少する傾向を認めた(P=0.051)。ApoC-IIモノクロナール抗体によるElisa-Kitを作成し、65例の子宮頸癌患者の血清のApoC-IIを測定し、臨床データやMMP1と予後との相関をCox比例ハザード単変量、多変量で解析した。ApoC-IIは放射線治療後の原病死生存率に関与し(単変量P=0.01、多変量P=0.02)、特異度は97.9%、感度44.4%であった。したがって、我々が検出したApoC-IIは進行期子宮頸癌の放射線治療効果予測因子として有用なバイオマーカーの可能性がある。
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