研究概要 |
インスリン産生細胞および再生膵島細胞の作成は、重症糖尿病患者に対する膵島移植医療における臓器提供者不足を根本的に解決する重要課題である。我々は、本年度の研究において、胚葉を超えた分化誘導の可能性に関して検討するために、中胚葉系の細胞である脂肪由来幹細胞(ASC)から内胚葉系細胞であるインスリン分泌細胞への分化誘導、および内胚葉系の細胞である膵幹細胞から中胚葉系細胞である脂肪細胞、骨細胞への分化誘導の検討をそれぞれ行った。その結果、従来報告されている分化誘導法では胚葉を超えた分化誘導はきわめて困難であることが示唆された。従って、新規3Dマトリックスの開発と併用分化誘導法の研究、および低毒性高効率の遺伝子導入法として近年臨床応用が開始されているセンダイウイルスベクターを用いたPDX1, NeuroD, MafA, Ngn3遺伝子の重複遺伝子導入法による分化誘導法の研究へと研究を進行させるべく、センダイウイルスベクターによる膵幹細胞への遺伝子導入法の検討を行った。その結果、センダイウイルスベクターはアデノウイルスベクターと同様の遺伝子導入効率を有し、しかもきわめて毒性が低いこと、遺伝子導入法として、付着細胞系より浮遊細胞系の方が遺伝子導入効率が良好であることが明らかとなった。 以上の結果から、次年度においては、1)新規3Dマトリックスと蛋白導入法の併用による分化誘導法、2)センダイウイルスベクターによる重複遺伝子導入による分化誘導法を行い、インスリン産生細胞および再生膵島細胞の作成研究と糖尿病モデルマウスの治療実験を実施する計画である。
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