肝移植医療において近年C型肝炎ウィルス(HCV)感染による肝硬変は最大の適応疾患であるが、移植後のC型肝炎再発が移植肝の予後を左右する重要な問題となっている。本研究は、HCV関連肝硬変患者に対する生体肝移植に関して、移植前のT細胞表現型からみた患者分類に従って拒絶反応とC型肝炎再発の両面からみたリスク評価を行い、それに応じた免疫抑制療法を計画、実施することを主な目的としている。術前に末梢血リンパ球を採取し、種々の細胞表面マーカーの抗体を用いてTリンパ球のCD4細胞、CD8細胞におけるCD45表現型によるサブセット、特にnaive T-cell、central/memory T-cell及びeffector/memory T-cellの分析を中心にCD45 isoform expression profilingを行った。その結果をクラスター分析を導入して解析し、subset profileから移植患者を3類型(Group I~III)に分類した。これまでの検討から特にGroup IIIの患者は拒絶反応のリスクは低いが感染症のリスクが高いことが示唆されており、まずABO血液型不適合移植に限ってこのGroup IIIに属する患者にはステロイドの減量プロトコールを開始した。その結果、液性拒絶の頻度を高めることなく敗血症合併率を47%から25%に、術後在院死を33%から12%に減少させることに成功し、術前免疫能に応じた免疫抑制療法調節が有効であることを実証した。またC型肝炎患者ではこのGroup IIIにおいて肝炎再発が重症化しやすい傾向にあることを見出した。
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