従来から老化細胞は様々な炎症性サイトカインを分泌すること、および炎症性サイトカインが周辺の細胞に作用してさらに細胞老化を促進する可能性が指摘されている。また、大動脈瘤では周囲径の拡大に伴って壁ストレスが増加することが病態の進展に関与すると推定されている。しかし、大動脈瘤組織において殿細胞が壁ストレスを感知するか、また、ストレス感知の分子メカニズムは明らかではない。平成19年度は「大動脈瘤病態では過度の壁ストレスが炎症シグナルを介して細胞老化を制御している」との仮説に基づき、大動脈瘤病態で中心的な役割を果たす血管平滑筋細胞およびマクロファージの伸展培養系を確立した。シリコン膜上に培養した初代培養マクロファージに、周期的伸展刺激を加えたところ、大動脈瘤病態の鍵分子であるJNKの活性化を認めると同時に、炎症性サイトカイン分泌の元進を認めた。一方、初代培養血管平滑筋細胞を伸展すると、活性化JNKは検出されたが、炎症性サイトカインの分泌は検出されなかった。これらの結果からは、マクロファージが伸展刺激を感知して炎症性サイトカインを分泌し、マクロファージ自身や血管平滑筋細胞にオートクライン的、パラクライン的に作用することで、細胞老化の促進等の異常を起こしていることが示唆された。
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