研究概要 |
消化器癌の転移・再発の成立においては、癌側因子と宿主側因子とが転移形成に必須の新たな「転移巣社会」を形成すると推察されるため、両面から俯瞰的研究により転移再発機構を解明し、診断・治療の標的を求めることが重要である。われわれはその観点から、特に、1)癌細胞における転移再発促進機構および2)宿主側におけるその幕助機構の二つの側面から検討している(Ann Surg Oncol2009 16:1070-1)。 今年度中に報告しえた成果は、癌細胞より直接分泌され浸潤・転移に重要な役割を担うu-PAR/u-PA(胃癌Br J Cancer2008;100:159-3、乳癌孟Ann Surg Oncol2009in press)、MT1-MMP(Ann Surg Oncolg2008;15:2934-42)の胃癌における重要な意義を明らかにした。また、MMP1については血清における蛋白測定の意義を明らかにした(Clin Cancer Res投稿中)。さらに大腸癌において癌細胞のEMTを誘導する新規分子を同定したが同分子は、特にCD133陽性細胞において過剰発現した場合造腫瘍能を有することを明らかにした(Nat Med投稿中)。さらに胃癌においてもEMT誘導が生じることも明らかにしており、VEGFR1を発現する胃癌細胞が骨髄中において過剰発現することが高い悪性度に関与することを示した(Gut, revise中)。細胞周期関連分子としては、GO期を誘導する分子の原発巣における役罰を明らかにした(Cancer Res2009in press)。一方、宿主側の転移幇助機構としては、癌幹細胞のニッチとなる骨髄前駆細胞由来のVEGFR1の意義を明らかにしたが(Clin Cancer Res 2008;14:2609-16)、血管内皮前駆細胞由来のId1の臨床的意義を明らかにした(Br J Cancer,minor revise中)。 今後、本助成による関連の報告は、平成21年度中にさらに15編以上行える見込みである。
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