研究概要 |
主目的は、個々の臓器の癌組織に特徴的な形態形成シグナル系のネットワーク構築を見出し、「臓器特異的癌治療法」を開発することであり、本年度の当初計画は、細胞株の結果をもとに、in vitroの治療モデルを用いて、臓器特異的治療法開発の可能性を検証することである。本年度の、成果は次のようである。1)新鮮腫瘍細胞に対する治療効果の確認:手術時採取大腸癌組織より分離した新鮮癌細胞にGlil遺伝子を導入し、Wntシグナル系の抑制を確認した。また、癌部を含む大腸ポリープ切除症例において、ポリープ部でのGlil発現亢進とWntシグナルの抑制、癌部でのWntシグナル活性化とGlil発現抑制を確認し、両シグナル系の制御が大腸癌予防治療法開発へ発展する可能性を組織レベルで確認した。2)高次三次元癌組織類似モデルによる治療効果の確認:われわれは、間質細胞を含有するタイプIコラーゲン中で三次元増殖する癌組織類似モデルを開発している。本モデルにおいて、膵癌細胞へのGlil導入による浸潤能亢進、cyclopamineおよびMMP9 siRNAによる浸潤能抑制を確認した。3)その他の重要な成果:本年度は、乳癌においてERa経路とHedgehog(Hh系の連関(Anticancer Res28:731,2008)およびHh系はER陰性乳癌の治療標的となること(Anticancer Res,in press)、Hh系がEra陽性胃癌の治療標的となること、Hh系が乳癌や膵癌の浸潤抑制の標的となること(Cancer Sci,99:1377,2008)、さらに、本研究の結果の集積・解析の結果、予想しなかったGlilが広範囲の癌腫に対する治療標的となる可能性を見出した(平成21年度基盤B:広範囲癌腫に対する分子標的治療法開発のためのGlil分子の機能解析)。
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