研究概要 |
我々は消化管癌(食道,胃,大腸)の切除検体を癌部・非癌部に分け、MELTによりmiRNAを豊富に含むmRNAの精製を行い、組織バンクとして保存を行っている。このRNAを用いて幾つかのmiRNAをターゲットにTaqMan法によるreal time RT-PCRを施行した。その中で、miR-21の発現は食道癌、胃癌、大腸癌組織で正常より増強していることが分かった。特に食道癌では25の検体について検討するとmiR-21の発現は正常より約3.5倍の発現量を呈し、腫瘍径との有意な相関性を認めた(p<0.05)。次にendogenous miR-21の発現量が異なる3種の食道癌細胞株(high、middle、low)を用いて、2'-0-methy1化処理のAnti-miR-21を細胞内へtransfectionを行いmiR-21の発現を抑制させ、細胞増殖への影響をMTS assayにて検討した。miR-21の発現の抑制程度に比して、細胞増殖が抑制された。 以上より、miR-21は細胞増殖に関連する遺伝子を制御していることが推察された。最近の報告で、miR-21のターゲット遺伝子としてPTEN(PI3K pathwayの制御),programmed cell death 4(tumor suppressor gene),tropomyosin 1(tumor suppressor gene)が関与していることが報告されており、現在、数種の新たなターゲット候補遺伝子の3'UTRをplasmidに組み込みLuciferase assayにより検証中である。切除検体には白血球や間質細胞の混入があるため、癌が本当にmiR-21を発現しているか検証するため、In-situ hybridizationを行った。癌で特異的にmiR21の発現が増強していることを組織上で確認した。miR-21は癌の発生・進展に広く関与している可能生があると思われる。
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