研究概要 |
当該年度は,TSP-1発現Arming oncolytic HSV-1の作成とその機能解析を行った我々はすでに,BAC(bacterial artificial chromosome)systemを利用したoncolyticHSV-1の作成には,その技術を会得している.当該年度の研究では,より安全性の高いoncolytic HsvであるG47△(Proc Natl Acad Sci 98(11):6396-6401,2001)を基本骨格とするBACのT-BAC system(Cancer Res65:10663-10668,2005)を用いて機能遺伝子搭載型ウイルス(Arming oncolytic HSV-1)を作成して腫瘍微小環境におけるウイルス治療の治療効果について検討した,治療モデルとして,胃癌の再発形式のひとつである腹膜播種に対する治療を想定し,TMN-1を用いて,我々がすでに報告した方法(Ueda K et al.Eur J Cancer40:2135-2142,2004)を用いて腹膜播種モデルを作成した.このモデルに対して,我々が開発してきたBaco-1(EGFP発現oncolytic HSV-1),fusogenic Baco-1(cell fusion induced oncolytic HSV-1),Synco-2D(Nakamori M et.al.Clin Cancer Res9:2727-2733,2003)との比較として,それぞれの新しいウイルスを腹腔内投与し,その治療効果を比較した.さらに,この検討において,治療効果は当然のこと,病理組織学,免疫組織学的に腫瘍組織,腹膜,腸管,肝臓,脾臓に対する評価をすることで,腫瘍微小環境における効果を確認し,臨床応用への資料とした. また,(1)切除不能進行再発膵癌に対する腫瘍血管を標的とした腫瘍特異的免疫療法と抗ガン剤gemcitabineの併用療法,(2)進行再発食道癌に対する新規癌関連抗原遺伝子由来エピトープペプチドを用いた腫瘍特異的ワクチン療法はほぼ予定通りに症例数の集積が行えた.現在,これらの症例の臨床効果,臨床モニタリングの評価,今後の問題点の抽出を行っている.
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