研究課題
定量的に癒着形成可能な腹腔内癒着形成マウスモデルを新規に作製の上、腹腔内癒着形成メカニズムを解析し、その制御による癒着予防法を考案した。平成20年度までの研究成果としてで(1)腸管漿膜障害により障害局所において神経伝達物質のsubstanceP(SP)発現が増強し、SPがNKT細胞に直接作用してIFN-γ発現を増強させる。(2)NKT細胞から産生された1FN-γはSTAT1を介して、凝固系因子であるPAI-1発現を増強させ癒着形成を促進させる。(3)術前に抗IFN-γ抗体を投与する事でPAI-1発現を抑制し、癒着形成を減弱しえた。(4)IFN-γ抑制作用のあるHepatocyteGrowth Factor(HGF)蛋白を投与する事により、IFN-γ発現及びPAI-1発現を抑制し、癒着形成を著明に抑制しえた。その際、治癒過程に影響は認められなかった。(5)HGF投与は術直後が最も癒着抑制効果が高く、術後24時間以降に投与しても癒着抑制効果は認められなかった。本年度は臨床応用に向けたステップとして、ラットにおける癒着形成メカニズムの検討とHGF投与による癒着抑制効果を検討した。1)ラットの盲腸をバイポーラ電気メスを用いて1秒焼灼後、閉創した。術後経時的に開腹して腸管mRNAを抽出し、tPA及びPAI-1 mRNA発現をリアルタイムPCRで解析した。また、HGFを術直後にSCしてtPA及びPAI-1発現を検討し、術後1週間での癒着形成状況を癒着スコアリングシステムを用いて評価した。術後1週間でラットの盲腸は著明な癒着を形成した。2)手術侵襲を加えたラットの腸管PAI-1mRNA発現は術後1日目をピークに増減するのに対し、tPAmRNA発現は術後1日目著明に低下した。3)HGF投与群は術後1日目のPAI-1発現が低下し、術後1週間での癒着抑制効果を認めた。以上よりラットにおいてもマウスと同様に癒着形成メカニズムを制御する事で癒着抑制効果を発揮しえた事から、癒着形成メカニズムは他動物と共通するメカニズムである可能性が示された。さらに新しい癒着モデルである肝切除後癒着モデルを確立した。現在同モデルを用いてさらなる癒着メカニズムの解析を進行中である。
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