補助人工心臓による循環補助管理に関して、循環補助と生体の活動との間の関連性について補助流量の概日リズムを人工心臓パラメータの一定駆動状態において検討を行ったところ、補助流量に近似される消費電流は昼間に上昇する概日リズムを有しえることが明らかになった。補助人工心臓装着患者の搬送において、空気圧駆動式補助人工心臓を使用の場合、従来の大型駆動装置では電源確保、駆動装置の移動性の問題等により搬送を困難にしていたが開発した携帯型駆動装置の使用によって安定した循環補助下の搬送が可能となることが示唆された。補助循環時の抗凝血療法において、ワーファリンコントロールはPT-INRに基づいて行われるが携帯型PT-INR測定器を使用した場合と従来法の間に高い相関関係があり臨床上有効であるが、在宅管理のためには管理訓練とその実際運用に関する検討が重要である。抗凝血療法の管理法に関して、トロンボエラストログラフィ、血小板機能検査を用いてモニターを行ない、血液凝固能や血小板機能の変化の検討、抗血小板剤の効果判定を行いうる可能性が示唆された。小児用補助人工心臓の解剖学的フィティングに関してCT画像の三次元構築法を施行することによって体外式補助人工心臓の送脱血管が周辺臓器へ与える影響の形式の評価が可能であり、埋込型補助人工心臓においては血液ポンプが周辺臓器へ与える影響、最適形状検討のためのパラメータの検討を行い、各種パラメータの複合的な解析を要することが示唆された。人工心臓カニューレに関する研究では心室内への脱血管の挿入深さと角度を変更した場合の脱血管内や周囲の流動状態に関して数値計算モデルを用いて検討した。脱血管の挿入深さは心室内部における血液の洗い流しに関して大きな影響を持ち、脱血管挿入深さが浅い場合には大部分の血液は僧帽弁から脱血管までスムースに流れるが、深い場合には血液は心室底部から上部に向かって旋回した後に脱血管に流入する割合が多くなることが明らかとなった。脱血管挿入角度に関しては脱血管先端が僧帽弁中心に向かって挿入されている場合は鉛直方向に比べ僧帽弁から脱血管までスムーズに流入する流体の割合が大きく増加することが明らかになった。すなわち、僧帽弁から脱血管に至る距離あるいは角度が変化することにより心室内部での血液の流れパターンには明確な変化が生じうることが明らかとなった。
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