平成19年度は消化器癌細胞株のDNAメチル化マッピングのうち、大腸癌細胞株、肝癌細胞株が先行して終了している。DNA塩基配列そのものではなくその修飾要素として細胞分裂の際に娘細胞に維持・伝達される情報をエピジェネティクスと呼ぶが、DNAメチル化は最も重要なエピジェネティック変化の一つであり、DNAメチル化異常を詳細にゲノム上にマッピングし癌のエピゲノム異常を解明することは、癌の複雑な遺伝子制御異常を明らかにするために必須である。オリゴをプローブに用いたゲノムタイリングアレイによる我々のDIP-chip技術を用い、DNAメチル化を詳細にマッピングした。これらの癌細胞株に対し、脱メチル化剤5-aza-2-deoxycitine処理、ヒストン脱アセチル化阻害剤Trichostatin A処理を行う前後で発現アレイ解析も行い、遺伝子プロモーター領域メチル化の有無と、遺伝子発現消失、薬剤処理による発現回復の有無を解析した。その結果同定された783個のサイレンジンク候補遺伝子から62遺伝子を抽出。62遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化状態を定量的に解析するため、Bisulfite処理したDNAを鋳型に用いてPCRを行い、その産物を質量分析機MassArrayにかけることにより、定量解析した。平成19年度は大腸癌細胞株、肝癌細胞株、および大腸癌症例79例について定量解析を終了している。今後、大腸癌症例30例、肝癌症例60例について解析を加え、臨床病理学的因子と合わせて検討し、予後マーカーなど臨床応用可能なマーカーの同定、及び癌関連遺伝子候補の同定を行う。また、胃癌細胞株のメチル化ゲノム解析を同様に行い、抽出されるメチル化候補部位について胃癌症例を用いてメチル化定量解析していく予定である。
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