研究課題
肝癌血管侵襲性再発に対する分子標的治療(前臨床試験)肝癌は、血管新生に伴い血管侵襲能を獲得し再発する。前年度の肝癌血管浸潤の遺伝子ネットワーク解析により、Aurora B kinase経路の特異的活性化を検出した。さらに肝癌前臨床試験として、Aurora B特異的阻害剤を用いて解析した。Aurora B阻害剤投与により>4N DNA倍数体肝癌細胞の増加を認め、その増加率はIC_<50>値と相関した。ヒト肝癌細胞株SK-Hep1およびHep3Bでは、Aurora B阻害剤によって特異的基質histone H3リン酸化が濃度依存的に抑制され、アポトーシス細胞死を誘導した。Aurora B阻害剤100mg/kg/dayを2日投与×2週間をSK-Hep1皮下腫瘍モデルに投与した。投与群にて腫瘍の有意な退縮が観察され、14日間の観察期間では、平均腫瘍体積はコントロール群に比して15.5%と著明に減少した。肝臓組織環境内における効果を調べるために、マトリゲルを用いた肝腫瘍モデルを利用した。SK-Hep1肝腫瘍モデルにAurora B阻害剤100mg/kgを2日間×2週間投与したところ、投与群の全てにおいて、腫瘍増殖は抑制され、平均腫瘍重量はコントロール群の10%であった。同様の抗腫瘍効果がHep3B肝腫瘍モデルでも確認され、生存率は有意にAurora B阻害剤投与群で延長した。ヒト肝癌細胞の肝腫瘍モデルを用いて、Aurora B阻害剤の薬理作用を解析した。Aurora B阻害剤投与3日目にはhistone H3のリン酸化は著明に抑制されていたが、投与5日後には回復していた。アポトーシスマーカーcleaved Caspase3はAurora B阻害剤投与により段階的に増加した。動物実験を通して、治療群マウスでの疲弊や毒性の徴候は見られず、正常部肝組織、骨髄、腎、小腸、肺を含む宿主組織は異常を認めなかった。現在、今回解析したAurora B阻害剤は既に白血病に対して第1相臨床試験が進められており、難治性肝癌に対する有効性、認容性も示唆された。
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