癌幹細胞は分化能と自己複製能を有する細胞で、発癌メカニズムにおける重要性が報告されている。 本研究の目的は、胆管癌幹細胞の網羅的遺伝子解析により同定した遺伝子に対して分子標的治療を開発し、その実用化を目指すものである。 【胆管癌幹細胞の分離およびその網羅的遺伝子解析】 胆管癌由来細胞株HuCCT1より磁性ビーズを用いて分離したCD45陰性、TER陰性、CD49f陽性、c-Met陽性細胞の免疫染色において肝細胞のマーカーであるアルブミン、胆管細胞のマーカーであるサイトケラチン19の発現を認めることができなかった。CD133抗体を用いて胆管癌由来細胞株HuCCT1をCD133陽性胆管癌細胞とCD133陰性胆管癌細胞に分離した。この分離した細胞に関してDNAアレイ法による網羅的遺伝子解析を行った。その結果CD133陽性胆管癌細胞とCD133陰性胆管癌細胞の間にCD45、TER、CD49f、c-Metの発現に定まった傾向を認めなかった。現在その他の遺伝子発現に関しても詳細に解析中である。 【担癌動物実験モデルを用いたsiRNAの効果的かつ安全な投与法の開発】 CD133陽性胆管癌細胞とCD133陰性胆管癌細胞をヌードマウスに移植し皮下発癌を作成した。いずれの群においても、腫瘍サイズに有意差はなかった。大腸癌においてはCD133の発現の有無により腫瘍形成能に差があると報告されている。しかし胆管癌で有意差はなかったことについて、由来臓器の違い、CD133以外の癌幹細胞マーカーの存在など様々なことが原因として考えら、今後の更なる検討が必要である。 【意義・重要性】胆管癌幹細胞を標的にした新たな分子標的治療が開発されれば、肝門部胆管癌の治療成績の向上が期待され本研究は意義のある研究である。
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