研究課題
1.硬変肝のeNOSシグナル改善による肝内微小循環障害の改善肝硬変症においては、ETやAT-IIの発現が亢進し、さらに類洞内皮細胞からのNO分泌が低下しているため、肝星細胞の収縮が強まり、類洞血管抵抗が増大し、肝内微小循環が障害され、門脈圧亢進症をきたしている。肝硬変症における類洞内皮細胞のNO分泌障害は、AktによるeNOSのリン酸化障害であることがわかっているが、その機序は不明であった。そこで、類洞内皮細胞におけるAkt-eNOSリン酸化の障害にRho kinaseが関与しているのではないかと仮説をたて、検討した。肝硬変ラットにRho kinase阻害剤であるfasdil(1 or 2mg/dl)を点滴静注すると門脈圧が約20%、肝内血管抵抗が約30%低下することがわかった。また、Rho kinase阻害剤を用いることで、肝内eNOSリン酸化およびeNOSとAktの結合が増加することも判明し、さらにRho kinaeとAktが直接結合することにより、Rho kinaseがAktとeNOSの結合を阻害し、eNOS酵素活性を傷害していることを証明した。2.肝再生時の血管新生のメカニズムの解明ラット70%肝切除モデルを使用し、肝再生時の血管新生因子であるVEGFおよびNOの役割を検討し、肝再生に関与する血管新生のシグナル伝達経路としてVEGF-NO相関を明らかにした。1-NAMEによるNOの抑制により、肝再生は抑制され、肝切除後3日目の類洞面積低下ならびにVEGF発現が抑制され、NOは肝再生時の類洞血流の維持に重要であること、ならびに肝再生早期のVEGF発現にも関与することが示唆された。
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Hepatology 47(3)
ページ: 966-977
Life Science 80(22)
ページ: 2036-2044