研究課題
我々は、世界に先駆けてRunx3ノックアウトマウスを作製し、その解析よりRUNX3遺伝子が胃粘膜の発生や分化に重要な役割をはたしており、この異常が胃粘膜の脱分化や異常増殖や癌化に関連することを示した。さらに胃癌の発生母地である慢性胃炎粘膜や腸上皮化生におけるRUNX3の解析や胃癌の転移浸潤におけるRUNX3の関与を明らかとし、将来的にはこれらに基づく胃粘膜の発癌リスク予測や胃癌の転移予測などの遺伝子診断や遺伝子治療を目指しており、胃癌の発癌予防や消化管粘膜再生にも応用しうると考えている。またRUNX3遺伝子の関与する疾患は主に胃癌と考えられていたが、我々は、肝細胞癌、膵臓癌、大腸癌においてもRUNX3遺伝子の関与の可能性を示唆するデータを得ており(Oncogene, 2004, 2007)、これらの癌においてもRUNX3遺伝子の異常を指標とした遺伝子診断や遺伝子治療への応用を行ないつつある。RUNX3はTGFβ依存性アポプトーシスに重要な役割を果たしており、食道扁平上皮癌における放射線、化学療法の感受性に関与していることが明らかになった(Oncogene, 2007)。またRUNX3遺伝子の関与する疾患は主に胃癌と考えられていたが、RUNX3メチル化を指標とした定量メチル化診断システムを用いた血清診断は従来の腫瘍マーカーを補完しうる新しい胃癌の血清診断マーカーになりうる可能性が示唆された(Anticancer Res. 2009, in press)。さらに我々は日立ソフトLuminexシステムにより、多数の検体における複数遺伝子のメチル化を定量的に短時間で測定しうる迅速血清診断システムを確立し、実地臨床に応用しつつある。さらにYeast two hybrid system等により、RUNX3と結合する分子を同定し、これを含む複合体または分子経路を解明することにより、これらの中にドラッグデザインしやすい分子標的の見つかる可能性も十分あり、将来の治療応用を視野に入れて研究を進めている。最終的には、RUNX3を分子標的とした癌予防と治療により国民健康の増進と医療費の抑制にも寄与しうると考えている。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
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