研究課題/領域番号 |
19390355
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
|
研究分担者 |
北川 雄光 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (20204878)
藤田 知信 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20199334)
桜井 敏晴 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20101933)
塚本 信夫 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20407117)
工藤 千恵 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90424126)
|
キーワード | 大腸癌 / 免疫療法 / 免疫抑制 / 樹状細胞 / シグナル伝達阻害 / 上皮間葉転換 |
研究概要 |
本年度は、前年度のヒト大腸癌による免疫抑制の分子機構の結果に基づいて、マウス大腸癌モデルを用いた免疫増強法の開発を中心に研究を実施した。前年度明らかにしたヒト大腸癌MAPKシグナル亢進による免疫抑制性サイトカイン産生を介した免疫抑制に関して、大腸癌マウスモデルで大腸癌のMAPKシグナル抑制による免疫増強効果を検討した。ERK1とERK2のshRNAを連結したレンチウイルスで処理してMAPKシグナルを阻害したマウス大腸癌細胞株を用いて、マウス大腸癌モデルで、予防的あるいは治療的に免疫すると、大腸癌抗原に対するT細胞応答の増強とともに、より強い抗腫瘍効果が得られ、大腸癌細胞におけるMAPKシグナルの阻害は、個体レベルでも、抗腫瘍免疫誘導の増強につながることが証明され、今後、大腸癌においてMAPK阻害薬を併用した免疫療法の効果増強の可能性が示唆された。また、大腸癌が産生するサイトカインは、樹状細胞のSTAT3シグナルの活性化により樹状細胞の機能低下を引き起こす。そこで、STAT3ノックアウトマウスから得た樹状細胞にマウス大腸癌抗原ペプチドを感作して、大腸癌移植マウスに腫瘍内投与したところ、強い抗腫瘍免疫誘導と抗腫瘍効果を示した。臨床応用に向けて、shRNAでSTAT3を低下させたヒト樹状細胞を用いてin vitro T細胞誘導を試みたところ、抗原特異的T細胞を強く誘導した。したがって、STAT3シグナルを阻害した樹状細胞を用いた免疫療法の開発の可能性が示唆された。さらにヒト大腸癌における免疫抑制機序の一つとして、大腸癌Snail誘導上皮間葉転換(EMT)においても、悪性黒色腫と同様に免疫抑制作用の増強を介した転移の促進が起こる可能性を見いだした。
|