研究概要 |
今年度はガンマ線による滅菌に主眼を置いた。 弁尖力学的特性の評価:生体組織にガンマ線を照射することによって,細胞外マトリックスの変性により組織強度が低下することが予想される。機械的ストレスに持続的にさらされる心臓弁,血管にとって,強度の低下は致命的であり,力学的特性の保持は必須である。昨年は力学的特性の評価のために大動脈壁の引張最大荷重点を評価したが,今年は弁尖の力学的特性の評価を行った。弁尖は大動脈壁と比較してサイズも小さく,形状も不安定であるため計測は困難であり,安定した結果を出すことが困難であった。しかし,治具,試験条件を工夫することにより安定した結果を出すことに成功した。滅菌線量:同種骨組織移植の滅菌では25kGyを滅菌線量としている。これは付着菌種,菌量が明らかでない場合にはsafety marginを含めて25kGyを滅菌線量とすることが推奨されているためである。しかし組織変化を最小限にするためには照射線量は極力小さいほうがよく,必要十分な線量を推測するにはBioburdenの決定が必要である。そのため現在組織バンクで,細菌検査陽性,ウイルス検査陽性のため研究転用となった保存グラフトの付着菌種,菌量の同定を予定している。来年度は実際の培養液環境下での滅菌効率,照射による細胞Viabilityの評価,照射による弁尖,血管壁の力学的特性の変化を調べる予定である。
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