本年度も前年度に引き続き放射線による滅菌及び、放射線が組織に与える影響について検討した。 ガンマ線による滅菌:〔概要と方法〕ガンマ線照射は照射設備を茨城県東海村に持つ日本照射サービス(株)に依頼することとし、輸送には冷蔵宅急便を用いた。発送から返送までは最短で7日間を要した。検体はMRSA懸濁液を用い、照射線量は2kGy、4kGyとした。これは施設の最低照射線量が1kGyであり2kGy以下では誤差も大きくなるためである。〔結果〕照射群・非照射群ともに想定以上に生存菌量が減少しており、照射群では全検体で細菌の生存が確認されなかった。原因として試験期間中の温度管理が不安定であることが考えられる。 X線による滅菌:〔概要と方法〕ガンマ線を使用する限り試験期間の短縮ができず温度管理も徹底できないことより、大学内で使用でき低線量を照射できるX線で組織の滅菌を試みることとし、試験期間は2日間に短縮された。検体は同じくMRSA懸濁液を用い、照射線量は10Gy、100Gyとした。〔結果〕生存菌数は予測される結果とほぼ同様で、100Gy照射で約6割に減少した。このことよりX線による低線量の照射でもほぼ計算通りの滅菌効率が得られることが確認された。 考察と今後の予定:S.aureusのD10値より400GyのX線照射では生存菌数が計算上は16%ほどに減少することが予測され、完全な滅菌は不可能なものの抗生剤処理と組み合わせることで抗生剤処理単独と、比較して感染性が改善することが期待される。また、培養平滑筋細胞が400GyのX線照射で優位に減少しないことより、血管graftのViabilityも大きくは悪化しないことが期待される。今後はさらなる至適照射線量の決定、培養細胞ではなくFreshgraftのViabilityを直接評価、graftの物理的特性の変化を評価していく予定である。
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