研究概要 |
ウイルスゲノムを遺伝子工学的に改変し,腫瘍細胞で選択的に複製するウイルスを作製して,ウイルス複製に伴う直接的な殺細胞効果を腫瘍治療に応用する。本研究は,増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1),特に第三世代HSV-1を基本骨格として治療遺伝子を発現する「武装」遺伝子組換えHSV-1を用いて,抗腫瘍効果が高く且つ安全で臨床応用可能な新しい悪性脳腫瘍の治療法開発を目的とする。三重欠失変異を有する増殖型HSV-1(T-01)に,任意の治療遺伝子を組み込むことのできるHSV-1ベクター作製系(BACシステム)を利用した。マウスIL-12遺伝子を挿入したT-mffL12を作製したところ,マウス腫瘍モデルでTリンパ球を介した抗腫瘍免疫が増強され,T-01に比べて高い抗腫瘍効果を示した。そこで更に,IL-12とIL-18遺伝子を同時に発現する二重武装HSV-1ベクター(T-mfiL12.IL18)を作製した。また,マウスIL-23を,IRESを用いて2つのサブユニットを発現させたT-mlL23iresと,single chainとして発現させたT-mIL23scを作製した。分子イメージングの手段として,基質依存的に発光するCBRルシフェラーゼ遺伝子をT-01-に挿入したT-lucを作製した。現在これら新ベクターのin vivo評価を進めている。幹細胞を腫瘍治療用HSV-1のdelivery systemとして利用し,腫瘍治療用HSV-1の治療効果を増強する方法を検討するため,HSV-1に感受性の高いA/Jマウスの胎児脳から神経幹細胞の分離培養を試み成功した。HSV-1感染に対する感受性や,マウス脳腫瘍モデルにおいて腫瘍に対するhoming能を評価する。
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