研究課題/領域番号 |
19390379
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
栗栖 薫 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70201473)
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研究分担者 |
杉山 一彦 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (30243554)
濱 聖司 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 非常勤講師 (40397980)
松浦 伸也 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (90274133)
泉 秀樹 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (10397987)
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キーワード | Survivin / malignant glioma / centrosome / chromosome instability / mitotic cell death / p53 / p16 / radiosensitivity |
研究概要 |
本年度は、培養細胞を用いて、RNAi法を用いたsurvivin発現抑制による悪性グリオーマ細胞の放射線増感機序についてさらに検討を進めた。実験には悪性グリオーマ細胞株U251MG(p53,変異型),D54MG(p53,野生型)を用いた。中心体の蛍光免疫染色、FISH法による解析では、survivinの抑制により、染色体の不安定性の程度に比例して放射線感受性が増加することが示された。またこの効果はp53の機能の違いにより影響されることも判明した。さらにTUNEL法によるアポトーシスの評価では、survivin抑制後の放射線誘発細胞死はアポトーシスによるものではなく、細胞周期解析の結果からは異数倍体の状態から直接細胞死が誘導されており、分裂期崩壊等によることを示した。今回の研究で,悪性グリオーマ細胞におけるsurvivinの抑制により中心体数および染色体不安定性が増加することが判明した。従来、染色体不安定性は悪性性格の獲得に関与するとされていたが、我々の検討では過度の染色体不安定性の導入は、逆に放射線感受性を増加させることが示唆された。またこの効果は短期の評価において、p53のstatusの違いにより影響されることも判明した。さらにsurvivin抑制後の放射線誘発細胞死はアポトーシスによるものではなく、細胞周期解析の結果からは異数倍体の状態から直接細胞死が誘導されており、分裂期崩壊等によることが示唆された。またこれまでに我々は、悪性グリオーマ細胞においてp16などの細胞周期調節因子を強制発現させると、放射線照射後細胞周期はG1期に停止し細胞増殖抑制効果を示し、細胞分裂の異常よると考えられる多核化などの核異常を伴って、遅発性放射線細胞死が活発に引き起こされることを報告したが、p16を強制発現させた悪性グリオーマ細胞においても中心体染色を行ったところ、やはり過剰複製を認めた。これらの結果は、多核化を伴う放射線誘発細胞死と染色体不安定性との間に相関があることをさらに強く示唆するものと考えられた。
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