研究課題
神経線維腫症の病態発症メカニズム解明と治療ターゲットの開発を目的として研究を進めている。本年度はNF1の細胞モデルを用いた融合プロテオミクスの方法論確立を試みた。分子発現差異解析法を融合的に用いて同一サンプル群を同時に解析し、得られたすべての情報を統合マイニングすることによって、重要分子シグナル群を抽出するためのプログラム[MANGO(Mol.Cell.Proteomics 2009),iPEACH(特願2010-81525)]を考案し、さらに抽出重要分子群の迅速検証法、siRNA、阻害剤、活性化剤等を用いた生物学的機能解析法などを検討することによって、スタンダードとなりうる一連の統合的方法論の開発を行った。モデル細胞として用いたPC12細胞において、siRNAによるNF1遺伝子発現の抑制は、NGFによる神経突起伸長を経時的に阻害し、細胞骨格系の制御異常、運動能の亢進および腫瘍塊様の形態変化を誘導した。NF1発現抑制細胞およびコントロール細胞より蛋白質を抽出し、高感度プロテオミクスiTRAQ法を用いて、LC・MALDI-TOF-TOFおよびLC-ESI-QqTOFによる定量的発現変動解析を行った。その結果、約1600種のPC12細胞内発現蛋白質を同定し、その内、NGF刺激によって特異的な発現差異を示す72種の蛋白質を抽出同定した。これらたは既知のNGF誘導分子のみならず、神経系細胞分化と細胞死抑制に関わる新規機能分子群が含まれることが判明した(Kobayashi et al.Mol.Cell.Proteomics 2009)。さらにNF1発現抑制により、NGF刺激PC12内で特異的に発現が変動する38種の蛋白質を確認した。これらにはRho、Rac、Cdc42、Rab、ERK、PAK、PI3Kに加えて、TCTPを含む新規の腫瘍関連ネットワーク分子等が含まれており、これらが総合的に細胞分化異常に関連すると考えられた。これらの結果から、これらの責任分子群を介するシグナル調節がNFにおいて障害された神経系細胞の機能改善に有用である可能性を提唱した。
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