研究概要 |
悪性神経膠芽腫および動脈硬化症に対する治療蛋白質の長期補充療法を実現するため、(1)新規AAVベクター作製システムおよび(2)ベクター産生型細胞の移植による治療遺伝子増幅システムの開発を行った。ウイルス粒子と中空粒子の等電点が異なることを予測し、強イオン交換膜を応用して、高規格なウイルス粒子の精製方法を検討した。密度勾配遠心による粗精製操作に加え、強イオン交換膜による陽イオン交換と陰イオン交換を組み合わせることで、中空粒子の回収および除去効率を格段に高め、極めて純度の高いベクターを調製する技術を開発し(Okada et al., Hum.Gene Ther.2009)、研究室における標準的なベクター作製システムとして実用化を達成した。この応用として、ベクター系による蛋白質補充療法を考案し、脳卒中モデルであるSHR-SPにおいて炎症制御療法の効果を実証した(Nomoto et al., Gene Ther, 16 : 383-91, 2009)。さらに、ベクター系を応用した細胞遺伝子治療として、間葉系幹細胞の悪性神経膠芽腫への集積性を証明し、病巣標的化ベクター産生細胞を開発した。実際に、このベクター産生細胞を用いて動物モデルの腫瘍組織内における遺伝子増幅と治療効果の増強作用を証明した(Okada et al., Front Biosci 13 : 1887-1891, 2008、 Uchibori et al., J Gene Med 11 : 373-81)。
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