研究概要 |
我々は末梢神経欠損間隙に対する新しい治療法として,末梢神経緩徐伸長法を開発し臨床応用を目指している.本研究の目的は,ヒトに使用可能な神経伸長器を新たに開発し、動物実験(成熟サル)により霊長類における本法の適応を確認することである。今年度は研究1-1:神経伸長器の開発および研究1-2:新鮮損傷時の治療法の確立を行った。カニクイザル3匹(No.1-3)を用いた。無麻酔下・数秒で各断端の神経伸長が可能な神経伸長器を開発した。No.1の動物では毎日の神経伸長に対する順化法、神経機能および上肢機能の評価法を検討したのち、前腕尺骨神経に15mmの神経欠損を作成し、上述の神経伸長器を装着、1日1mmの速度で20日間の神経伸長を行った。この間の観察により神経緩徐伸長期間に伸長により疼痛関連行動が生じないことがわかった。神経伸長後両断端は縫合可能な距離まで伸長されており、両断端の直接縫合術を行った。縫合後の神経再生能を電気生理(MCV,SEP,EMG)、知覚閾値検査(CPT)、Apple testにて経時的に評価したが、特異的な尺骨神経運動機能をApple testで評価することが困難であった。電気生理検査で神経再生が認められたため、12週目に組織採取を行ったところ組織学的にも良好な神経再生が認められた。No.2は前腕部正中神経を用い同様の実験を行った。No.3はコントロール群として正中神経の遊離神経移植術を行った。両動物について現在、術後神経再生能を経時的に観察中である。
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