研究概要 |
我々は末梢神経欠損間隙に対する新しい治療法として,末梢神経緩徐伸長法を開発し臨床応用を目指している。本研究の目的は,ヒトに使用可能な神経伸長器を新たに開発し、動物実験(成熟サル)により霊長類における本法の適応を確認することである。今年度はカニクイザル6匹(No.1-3)を用い前腕部正中神経に20mmの神経欠損を作成し、上述の神経伸長器を装着、1日1mmの速度で20日間の神経伸長を行った。縫合後の神経再生能を電気生理(MCV,SCV,NCV,TT)、知覚閾値検査(CPT)、Apple pinch testにて経時的に評価した。対象群として従来法である遊離神経移植群を作成し、比較した。MCV,SCVは両群で初回手術後16週までに測定可能となり、術前の値と比較した回復率は神経伸長群で高い傾向であった。Apple pinch testでは正中神経の機能評価として母指の外転をみたが、両群において術後12週頃から母指外転機能の再獲得が確認できた。組織評価は正中神経横断切片の有髄軸索顕微鏡下計側を行ったが、軸索総数は両群で同程度であったが軸索径は神経伸長群でより大きく、再生神経の成熟が進んでいるものと考えられた。以上の結果、神経伸長群で電気生理および組織学的により良好な神経再生が得られたと考えた。本法が霊長類においても適応でき、重大な合併症もなく有効な治療効果が得られることを確認できた。
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