研究課題/領域番号 |
19390397
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩本 幸英 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (00213322)
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研究分担者 |
小田 義直 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (70291515)
福士 純一 九州大学, 大学病院, 助教 (40444806)
松本 嘉寛 九州大学, 大学病院, 助教 (10346794)
坂本 昭夫 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教 (40335964)
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キーワード | 骨転移 / 破骨細胞 / 血管新生 / 分子標的治療 / 臨床応用 |
研究概要 |
腫瘍性骨破壊は強い疼痛の原因となり、患者のQuality of life (QOL)が著しく低下する。よって、その病態解明と治療法の開発は喫緊の課題である。近年、固形悪性腫瘍の増殖、浸潤、転移における腫瘍周囲微小環境の重要性が注目されている。本研究では、腫瘍性骨破壊における腫瘍周囲微小環境、特に血管新生と破骨細胞の分化/骨吸収の相互作用に注目し、新規治療法の確立を目指す。 腫瘍関連マクロファージ(TAM ; Tumor Associated Macrophage)は様々な悪性腫瘍で予後に影響を与える可能性があるが、今回は骨破壊を特徴とするEwing肉腫において、TAMの役割予後との関係を検討した。ヌードマウス皮下にEwing肉腫腫瘍を作成し、腫瘍よりTAMを分離した。TAM培養上清中のサイトカインを、Luminex systemを用いて網羅的に測定し、肝臓・脾臓由来のマクロファージと比較した。また、分離した細胞の破骨細胞への分化能を比較した。さらにEwing肉腫臨床サンプルでTAMの浸潤と予後との関連を調べた結果、(1)Ewing肉腫皮下腫瘍から分離したTAMの培養上清中において、IL-6、MCP-1、KCなどが著明に上昇していること、(2)TAMが破骨細胞への分化傾向を持つこと、(3)TAMの浸潤が多いほど有意に予後が不良であることを見いだした。よって、Ewing肉腫に浸潤したTAMは、様々な炎症性サイトカインやケモカインを産生するとともに、自身が破骨細胞へ分化、腫瘍性骨破壊を促進することでEwing肉腫の悪性進展に重要な役割を担っていると考えられた(投稿中)。 一方、骨巨細胞腫(Giant Cell Tumor ; GCT)は、多数の破骨細胞様巨細胞の出現を特徴とする良性の原発性骨腫瘍である。GCTは著明な骨破壊および間質の血管新生を認めることが多い。そのため、生体内における血管新生と破骨細胞分化/骨吸収の相互作用解析のための理想的なモデルと考えられる。今回、GCTの初代培養系を用いて解析を行った結果、強い血管新生作用を持つVascular endothelial growth factor (VEGF)がGCTの増殖、遊走能を促進すること、VEGFの発現とGCTの骨破壊進行度が相関していることを見いだした(Journal of Orthopaedic Surgery and Research, 2010)。
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