研究概要 |
骨形成を「骨リモデリング」の最終段階と捉え、骨リモデリングを「開始期」「(骨吸収から骨形成への)移行期」「終止期」の3期に分けることを提唱し、破骨細胞と骨芽細胞系譜の細胞間相互作用について論じた(Matsuo and Irie,2008,Arch Biochem Biophys,印刷中)。特に開始期においては、破骨細胞分化が、骨芽細胞との相互作用により細胞内カルシウム濃度の周期的変動に非依存的に起こることを示した(Kuroda, et. al.,2008,PNAS,印刷中)。これは、破骨細胞分化にはカルシウムオシレーションが必須であるというこれまでの常識を覆す知見である。さらにFralトランスジェニック(Tg)マウスにおいて「骨折後の骨修復のための骨形成が起動しない分子機構」を明らかにするために、脛骨の骨梁破壊実験や脛骨骨折の作製実験を行った。FralTgマウスにおける骨折治癒の遅延は、骨折部位周辺の炎症の低下を伴うことが、サイトカインの産生低下、Cox2遺伝子の発現低下などから示された。さらにPGE_2の投与により、骨折治癒の遅延が改善した(Yamaguchi, et. al.,投稿中)。しかし、炎症の低下と骨折時の軟骨形成不全とがどのように関わっているのかは不明である。さまざまな炎症性の遺伝子群は転写因子NF-_KBによって活性化されることが知られているが、少なくとも破骨細胞においては、NF-_KBの欠損がc-Fos/AP-1によってレスキューされることが分かった(Yamashita, et. al.,2007,JBC)。さらに骨修復の開始にAP-1が関与していたこと、 Fralトランスジェニックマウスの長管骨だけでなく耳小骨で血管の異常が認められた(論文準備中)。
|