研究課題
平成19年度の研究成果で、マウス脊髄損傷に対するマウス神経堤幹細胞移植により、移植細胞の生着およびニューロン、シュワン細胞への分化を確認したが、運動機能の回復は得られなかった。その要因として、移植細胞のほとんどがニューロンに分化したことが考えられた。そこで、20年度の研究方針を変更し、1)ヒト神経堤幹細胞の培養法の確立とシュワン細胞への分化誘導法の確立、2)マウス脊髄損傷における内在性神経堤幹細胞の関与を検討した。1)ヒト神経堤幹細胞の培養法の分化誘導法の確立:患者へのインフォームドコンセントに基づき、整形外科・皮膚科・形成外科の手術の際に生じた余剰な皮膚を酵素処理し、Neurosphere法に準じて培養を行いヒト皮膚由来細胞塊の形成を確認した。分化誘導後の細胞では、多くが筋線維芽細胞への分化を示し、ニューロン、グリアへの分化はごく少数で、ある程度linageの制限された細胞が多くを占めていることが考えられる。そこで、FACSを用いてCD90およびCD271陽性細胞をsortingした後にsphereを形成させると3系統に分化する多能性幹細胞を効率よく回収することが可能となった。2)マウス脊髄損傷における内在性神経堤幹細胞の関与:PO-Gre/Floxed-EGFP成体マウスに完全切断モデルを作製し、経時的に損傷脊髄内のGFP陽性細胞を観察した。これらGFP陽性細胞のphenotypeを免疫組織学的に検討した。損傷7日後にGFP陽性細胞が神経根から損傷脊髄内へ流入してくることを確認し、流入するGFP陽性細胞は損傷56日後まで経時的に増加した。GFP陽性細胞は炎症細胞やニューロン、血管平滑筋細胞のマーカーは発現せず、そのほとんどがシュワン系の細胞であった。損傷脊髄と神経根の接合部に着目すると、内在性のPO+成熟シュワン細胞がp75+未熟シュワン細胞へと脱分化し損傷脊髄内へと動員されることが分かった。損傷56日後に未熟シュワン細胞は損傷脊髄内で再度成熟シュワン細胞へと分化し、損傷部周囲の軸索を再髄鞘化することが明らかになった。
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