Runx2は間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化commitmentに、その下流のOsterixは骨芽細胞成熟に関わるが、Osterixの発現と骨芽細胞成熟マーカーの発現にはタイムラグがあり、Osterixの下流に未知の分化関連遺伝子があると仮定して、これまで骨形成蛋白(BMP)を用いた系のマイクロアレイにて候補遺伝子を19個に絞っていた。本年度はこれら候補遺伝子につきshRNAをベースとしたloss of function実験を積み重ね、さらにOsterixの下流という事にこだわり、in vivo、in vitroにおいて骨芽細胞特異的に発現する遺伝子をin situ hybridizationとreal-time PCRを駆使して検索したところ、あるgap junction/hemichannel分子にたどり着いた。この遺伝子のノックアウトマウスは既に作製を委託で開始していて、C57BL/6マウスへのback crossを進めて遺伝学的に均一な骨格解析の準備を行った。このマウスはtarget gene locusにLacZ遺伝子をノックインしているので、その発現をx-gal染色で確認したところ、完壁にOsterixの発現パターンと一致した。すなわち軟骨は染まらず、石灰化骨のみに発現が限局された。新生仔の骨格標本を作製したところ、軟骨の形成には異常を認めなかったが、アリザリン・レッドで観る石灰化骨の形成が減弱していた。この表現型はOsterixの機能の一部をこの遺伝子が担っている事を強く示唆するものであった。今後はノックアウトマウスの表現型をin vivoとin vitroで詳細に解析し、骨芽細胞分化成熟の分子メカニズムの理解を深めたい。
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