研究概要 |
健常者血清は,共同研究者であるアメリカオハイオ州シンシナティ子供病院呼吸器医学ブルース,トラップネル教授の研究室において,健常者72名の血清を収集した。当院においても,胃食道外科にて開腹手術を予定しており,説明に基づく同意が得られた患者から血液を10ml採取して血清に分離し,凍結保存を開始した。 健常者血清からリコンビナントGM-CSFをカップリングさせたアフィニティカラムを用いて,カラム結合画分を抽出した。電気泳動で分子量180kDaの単一のバンドを確認し,そのバンドを切り出して質量分析器にかけ,IgGであることを確認した。また,特発性肺胞蛋白症患者の血清中から抗GM-CSF自己抗体を検出するELISAは既に報告されており,それを改良してより高感度の抗体検出ELISAを作成して,健常者中の抗体濃度を定量したところ,全ての血清から抗体が検出された。抗体価の中間値は1.04μg/ml,25-75%範囲は0.63-1.7μg/ml,(n=72)であった。 血清中のGM-CSFのうち,抗GM-CSF自己抗体と結合している画分を測定するELISAを開発した。抗GM-CSF自己抗体と結合したリコンビナントGM-CSFは,通常の ELISAでは検出できないが,SDS処理を施すことで,抗体との結合が離れて,90%以上検出可能となることが確認された。この方法を応用し,抗GM-CSFポリクローナル抗体をプレートにコートしたものに,SDS処理した希釈血清サンプルをアプライし,結合したGM-CSFをビオチン化抗GM-CSFポリクローナル抗体で検出するELISAを開発し,血清サンプル中に存在する総GM-CSF(抗体結合分と非結合分の総和)を定量した。改良の余地は残るものの,これまでの結果血清中の総GM-CSF濃度は3ng/ml程度存在し,このうち99%以上が抗体と結合した状態であることが示された。
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