移植に用いることのできなかったヒト肺を用いた潅流標本において、肺循環潅流液や肺胞注入液中のRAGE濃度を測定すると、RAGE濃度と、肺における水分クリアランスには、逆相関があり、肺胞上皮が傷害された状態で、RAGEがこれらの液中に遊離してくることが示唆された。また、片肺移植、両肺移植、および心肺移植を行う患者20名を対象に、肺の再潅流4時間後に患者から採血し、血清RAGE濃度を測定し、血清RAGE濃度と患者の予後について検討した。血清RAGE濃度高値は、術後の人工呼吸時間やICU滞在期間と相関があり、RAGEが移植患者の予後予測に役立ちうることが示された。また、平成19年度を初年度とし、3年間の予定で周術期患者における血清RAGE濃度測定が計画され、胸部大動脈瘤に対する人工血管置換術(胸腹部大動脈瘤を含む)や心臓手術を対象とした臨床研究をを行った。血清RAGE濃度は、人工心肺を用いた手術で術後に上昇する傾向があり、上昇度の大きい症例の中で、死亡例や人工呼吸期間の長い症例が存在し、これらの患者において、Surfactant Protein Dやvon-Wilbrand Factor等の有意な変化を伴っていなかったことからも、肺における組織障害を示唆する因子としての可能性が示された。
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