研究概要 |
CB1受容体の特異的抗体を用いて脊髄でのCB1受容体発現を免疫染色法を用いて解析した.CB1受容体は脊髄後角第I層,第II層,第V層,第X層およびdosolateral funiculusに強い発現が観察された.第II層はその特異的分子の発現により外層,中間層,内層に分類されるが,CB1受容体は中間層での発現が少なく,おもに外層・内層に強い発現が観察された.脊髄でのCB1受容体発現は末梢神経切断によりほとんど影響を受けなかったため,CB1受容体はおもに脊髄に存在する細胞に発現していると考えられた.次に,グリア細胞での発現を検討するために,アストロサイトのマーカーであるGLAST,ミクログリアのマーカーであるIba1,オリゴグリアとの2重染色を行ったところGLASTと共存することが明らかとなり,CB1受容体は一部アストロサイトに発現することが明らかとなった.次に,神経での局在を明らかとするために各種神経マーカーとの2重染色を行った.その結果,CB1受容体は前シナプスマーカーであるsynaptophysinと共存し,MAP2とはほとんど共存しないことから前シナプスに特異的に発現することが明らかとなった.さらに,各種シナプス終末マーカーとの共存を検討したところ,興奮性終末のマーカーであるVGLUT2と共存することが明らかとなった.以上により,脊髄でCB1受容体は興奮性シナプス前終末およびアストロサイトに発現することが明らかとなった. さらにCB1受容体発現を正常マウスと骨がん疼痛モデルマウスで比較検討したところ,変化がないことが明らかとなった.モルヒネの受容体であるMOR1は骨がん疼痛モデルマウスで発現減少することを我々はすでに報告しており,この発現低下が骨がん疼痛でのモルヒネ抵抗性の一因して考えられた.CB1受容体発現は変化しないためCB1受容体は骨がん疼痛治療の新たな標的として期待された.
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