研究概要 |
正常マウスと骨がん疼痛モデルマウスで脊髄神経の電気生理学的解析をおこなった.方法として,正常マウスおよび骨がんモデルマウスから脊髄スライス標本(第3~第5脊髄神経が入力する部位)を作成した.一部の動物からは後根を付した脊髄スライス標本を作製した.ブラインドホールセルパッチクランプ法を用いて,脊髄第II層の介在神経よりmniature excitatory postsynaptic current(mEPSC),spontaneous EPSC(sEPSC),グルタミン酸受容体作動薬投与によるecoked EPSC(eEPSC),および後根刺激によるeEPSCを記録した.sEPSCの解析ではモデルマウスでは正常マウスに比べ有意に大きな振幅を示した.テトロドトキン投与下に観察されるmEPSCでも同様にモデルマウスでは正常マウスに比べ有意に大きな振幅を示した.AMPAおよびNMDA投与により惹起されるeEPSCもまた正常マウスに比べモデルマウスで大きな振幅を示した.後根刺激により惹起されるeEPSCの解析ではC線維刺激による単シナプス性の入力を受ける介在神経の数とAδ線維およびC線維からの多シナプス性入力を受ける介在神経の数がモデルマウスで有意に増加した.骨がん疼痛モデルマウスで観察される脊髄神経の機能的変化は他の疼痛モデルでの変化とは異なったユニークな変化であり,骨がん疼痛発生のメカニズムの1つであることが示唆された.
|