研究概要 |
新しい疼痛治療薬を開発する目的で、TrkA活性を抑制する細胞膜透過性ペプチドの配列をデザインし、作成した。ペプチドの基本構造は、スペーサーとしてε・アミノカプロン酸(acp)を挟んで、カルボキシル基側に細胞膜透過性を亢進させるTat配列(YGRKKRRQRRR-)と、アミノ基側にTrkA活性抑制作用を期待したアミノ酸配列(-DIYST,-RDIYSTD,SRDIYSTDYYR)を持つ。リコンビナントTrkAを用いたチロシンリン酸化のスクリーニングキットを使用したin vitroでの検索と、神経成長因子(NGF)刺激で神経突起伸長作用を示すPC12細胞を用いて、神経突起伸長作用をin vivoで検討した結果、YGRKKRRQRRR-acp-SRDIYSTDYYRがTrkA活性を60μMで抑制することが明らかとなった。 このペプチドに蛍光色素FITCを結合させ、PC12細胞における細胞膜透過性の確認を蛍光顕微鏡にて行い、良好な透過性を確認した。またこのペプチドが、PC12細胞におけるNGFによるTrkAの自己リン酸化とTRPV1発現増加を抑制することも明らかにした。 YGRKKRRQRRR-acp-SRDIYSTDYYRは、NGFの高親和性受容体のTrkA活性を直接抑制することが示唆された。今後は、動物を用いた炎症性疼痛モデルや神経因性疼痛モデルにおけるこのペプチドの疼痛抑制効果を検討する予定である。
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