研究概要 |
まず、HERVに関与する塩基配列からY染色体にTTY(testis-specific yranscript unit)familyに注目した。In silicoにて、AZFb領域にあるERV関連TTYを検索すると、TTY9,TTY10,TTY13の3種を検索でき、これらの転写物が精子形成に関与しているかを検討した。とくに、TTY13はHERV-K14Cが組み込まれ、精巣特異的に発現している事を明らかにし、有力な精子形成候補とした。また、内因性レトロウィルス(ERV)はサルに分化後の霊長類に集積され、ERV-Kと分類されるシークエンスは120万年前に霊長類に組み込まれたと考えられている。このHERV-KはGenBank上、Y染色体上に約12%の存在し、他の染色体に比べ多く挿入されている。とくに、HERV-Kl4Cは全ゲノムに146コピー存在しているが、20%の29コピーがY染色体に存在する。しかも、この29コピーはY染色体長腕上のX-degeneratedとampliconic領域にあり、パリンドロームP5からP1間に存在する。パリンドローム構造は、ほぼ対称な回文塩基配列をもち、パリンドロームを構成するに2つのアームに対してコピーをもつ。これらのHERV配列の多型性を確認し、系統図を作成することによってパリンドロームの生成された時期を推定した。霊長類(チンパンジ、ゴリラ、オランウータン、日本ザル)のゲノムを用いて、パリンドローム進化を確認後、TTY9,TTY10に比べ、TTYl3にあるHERV-14KCが比較的最近、ヒトに挿入されたことを明らかにした。さらに興味深いことに、HERVI3内のHERV-14KCは、LTRによって頻回にintra-homologousrecombination(染色体内相同再組換え)が生じているごとも明らかにした。次年度には発現遺伝子データーから、精子形成に関与するHERVの機序について研究する予定である。
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