研究概要 |
われわれのグループは精巣腫瘍のエピジェネティックスとその制御機構について先端的研究成果を報告し,精巣腫瘍DNAには脱メチル化状態という体細胞由来の癌とは異なる興味深い特性が存在することを見出し、さらに新規DNAマーカーとして利用するという臨床応用の可能性についても呈示してきた。 本研究では精巣腫瘍のエピジェネティックス維持機構の解明を臨床応用への重要な課題と捕らえ、精巣腫瘍固有のメチルトランスフェラーゼの異常を検索する中でわれわれは精巣腫瘍におけるDNMT3Lの果たす役割を解析するため、ヒトのDNMT3L発現ベクタを作成、293細胞に導入し、5種類の市販の抗ヒトDNMT3L抗体やマウスに対する抗体の供与を受けてヒトに対する交叉性や反応性を検討した。しかしながらいずれの抗体もヒトDNMT3Lを認識できなかった。そこでヒトDNMT3Lの全長配列に対するウサギポリクローナル抗体を新たに作成した。 その結果、DNMT3L蛋白がヒト胎児性癌にきわめて特異的な新規マーカーであることを見出し、さらにヒト胎児性癌の成育にはDNMT3Lが必須の分子であり、DNMT3Lの抑制によりアポトーシスを誘導できることを示した(Clin Cancer Res 2010)。
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