研究概要 |
難治性尿路バイオフィルム感染症の予防法および治療法の確立を主要な目的として研究を遂行した。 1. 過去数年間の研究成果として進化を遂げたin vitro尿路バイオフィルム実験系(キャピラリーフローセルシステムにおける共焦点レーザー走査型顕微鏡およびオールインワン蛍光顕微鏡での観察)において、緑膿菌クオラムセンシング[菌密度依存的遺伝子発現機欄の阻害剤として見出された化合物を評価した結果、緑膿菌性バイオフィルムに対して形成阻害効果を明らかに示したのは1種類であった。その化合物を抗菌薬(レボフロキサシン単独、レボフロキサシンとホスホマイシンの併用)と併用すると阻害効果が増強した。これらの新知見から、緑膿菌性尿路バイオフィルム感染症に対するクオラムセンシング阻害剤の有用性ならびに抗菌薬との併用による新規治療法の可能性が示唆された。 2. 新規in vivo尿路バイオフィルム感染症モデルの確立を目指し、IVIS Imaging System (Xenogen社)での検討を行った。発光標識バクテリア(緑膿菌:Pseudomonas aeruginosa Xen 5 & Xen 41,大腸菌:Escherrchia coli Xen 14,黄色ブドウ球菌:Staphylococcus aurevs Xen 29)および蛍光標識バクテリア(GFP産生P. aeruginosa OP14-210)を用いた。マウス・ラットを用いた尿路バイオフィルム感染症モデルは、P. aeruginosa OP14-210株を用いて再現性のある実験系として確立できた。しかし、IVISによるin vivo観察において、膀胱内留置ポリエチレンチューブ(PT)に形成されたバイオフィルムの発光蛍光強度に棟出限界以下であった。なお、PT付着バイオフィルムの数値化には、クリスタルバイオレットによる染色法(バイオフィルムアッセイ)が簡便であり、生菌数との相関性があった。
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