研究概要 |
ヒト腎癌についての大きな問題点は血中及び尿中の診断マーカーが存在しないため画像以外には早期診断が難しいこと、また転移の早期発見が難しく転移癌への有効な治療法が存在しないことである。我々は現在までヒト腎細胞癌の診断に関与する有力なマーカーの開発を目指して研究を続けてきた。我々はヒト腎癌における遺伝子のメチル化解析を行い腎癌の新規DNAマーカーとしてのメチル化遺伝子、Hoxbl3、及び4つのメチル化DNAマーカーであるMIRC33,34,72-1,72-2を同定した。これらは癌組織内でメチル化比率が高く、これらを血中で定量する方法を開発出来れば、ヒト腎癌の血中、尿中マーカー診断が行うことが可能となる。血中及び尿より抽出したDNAを用いてmethylation specific PCR法でメチル化遺伝子の存在を定量的に同定することができる。さらに、近年の我々らのグループと東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター(中村研究室)の共同研究で腎細胞癌特異的な分泌型増殖因子蛋白、かつ腫瘍マーカーであるHIG2(Hypoxia Inducible Factor2)の存在を明らかにした。これはヒト腎癌において現在、世界的に特異性の高い唯一の血中マーカーの有力候補であり腎癌の術前には高値を示し、転移癌でも高値を示す。 上記の内容を含めてヒト腎臓癌のマーカーの探索を行ってきた。HIG2については単クローン抗体を作成中である。さらに、我々は体節の決定因子でHOXb13がヒト腎細胞癌の主要なメチル化遺伝子蛋白であり、癌抑制遺伝子であることは発見しており、その強制発現系で誘導される蛋白群と抑制を受ける蛋白群を発見してこれらの内、腎細胞癌特異的なものがあるかを検討した。現在、その詳細をさらに検討中である。また、これ以外にもcDMAmicroarrayの解析結果や(Genome-wide gene expression profiles of clear cell renal cell carcino ma: identification of molecular tarets for treatment of renal cell carcinoma. Hirota E, Y an L, Tsunoda T, Ashida S, Fujime M, Shuin T, Miki T, Nakamura Y, Katagiri T. Int J Oncol.2006 Oct;29(4):799-827.)、ヒト腎細胞癌の分類的な検索を行いつつ、腎臓癌特異腫瘍蛋白の探索を施行した。
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