鹿児島大学中西名誉教授(現、分担者研究室特任教授)が国内で開発したMHC確立クラウンミニブタを用い、HGFの腎移植拒絶反応抑制効果の検討、及びドナー特異的末梢性免疫寛容導入を目指す実験を行った。初年度に確立した腎移植拒絶反応モデルを用い、平成20年度はHGFによる導入期拒絶反応抑制効果という大きな成果を得、国際移植学会及び米国腎臓学会で口演発表後、論文投稿の段階に至り、またin vitro培養試験は既に米国移植学会誌に掲載された(以下詳述)。 研究目的に対する成果の要旨を以下に示す。 1.平成19年度に、12日間FK506療法(血中濃度≧35ng/ml)によるMHC完全不適合腎移植で、MGHミニブタでは免疫寛容を誘導しえるが(分担者が論文報告済)、クラウンミニブタ全6例とも移植腎が拒絶される知見を得た(目的1)。平成20年度はその個体の検体を用い(1)組織学的に術後30日前後での急性拒絶に加え慢性拒絶への進展所見、(2)免疫染色による移植腎血管病変部への抗ドナー抗体沈着、(3)血清解析による抗ドナー抗体産生、(4)導入期の末梢血中CD4/FoxP3陽性細胞(Treg)の減少を確認した(目的3)。 2.上記モデルを対象とし、拒絶反応が生じる移植後11日からHGF投与を行い(高濃度群0.03mg/kg/日×7日、低濃度群0.015mg/kg/日×14日)、全4例で移植後50日まで急性拒絶反応はなく、移植後18日血清Cre値1.9±03mg/dlは対象群82±1.5mg/dlに対し有意に良好で(目的2-a)、抗ドナー抗体産生はなく、末梢血中CD4/FoxP3陽性細胞も維持された(目的3)。 3.更にHGFによるT細胞の直接制御効果をin vitro共培養試験で検討したところ、T細胞の直接制御効果を認めず、HGFの拒絶反応制御効果はマクロファージなどT細胞以外の細胞からのサイトカイン産生等による抑制効果が示唆された。
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