研究課題
本研究の目的は、卵巣癌において、エピジェネティックな修飾を受ける遺伝子の構造上あるいは機能的な特徴を評価することである。これまでに、網羅的なDNAメチル化変異解析と生物学的特性について検討した。また、エストロゲン関連遺伝子とインプリント制御領域に着目し、DNAメチル化と遺伝子の発現パターンと異常の頻度、程度について卵巣癌検体を用いて解析した。さらに(食)生活習慣との関連性について評価、解析した。【具体的内容】1)卵巣癌患者の登録:症例142例、対照229例。平均年齢は症例56.1歳、対照群49.5歳。2)高危険因子の解析:BMIは、統計学的に有意に増加。授乳歴は、有意にリスク低下。野菜摂取頻度の上昇は、卵巣癌のリスク低下。しかし、摂取総カロリーやBMIなどの交絡因子を考慮し解析すると有意差は消失。栄養素ではレチノール摂取量が腫瘍のリスク上昇と関連。統計学的有意差はなかったものの、ビタミンA摂取量がリスク上昇、ビタミンCはリスク低下傾向。【意義】エピジェネティックな修飾は発生プログラムに従って確立され細胞の記憶として働くが、その破綻が細胞癌化に繋がると考えられ注目されている。よってエピジェネティックスの解明は、今後の医療に新しい展開をもたらし得る大いなる可能性を秘めている。本研究は、卵巣癌の病態解明に貢献する。しかし本研究のような前方視的な研究にあっては、中途での解析は研究結果に影響する恐れがある。現在のサンプルサイズでは十分な統計学的パワー(検出力)が得られないため、腫瘍の病因について結論を導き出すことはできない。【重要性】未だ早期診断法がなく、予後不良な卵巣癌の分子機構の解明は、疾患の予防、新しい診断マーカーや創薬治療開発に新たな癌治療戦略を拓くことが可能である。DNAメチル化の変異は、栄養や環境で変化しうる可塑性を有するため、将来治療できる可能性が十分期待される。
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