研究概要 |
1.HPV16 L1蛋白に交差中和エピトープを含むHPV16 L2ペプチドを挿入することによって、VLPワクチンを改変することを試みた。3種類のキメラL1蛋白が、昆虫細胞であるSf9細胞でレコンビナント・バキュロウイルスから発現する。このキメラVLPsを解析した結果、表面にL2ペプチドを提示していた。このキメラVLPでウサギを免疫することで、HPV16の中和抗体を産生する能力を維持し、HPV18,HPV31,HPV52,HPV58の感染性偽ウイルス粒子を交差中和する抗体を産生する能力を獲得したことが確認された。 2.子宮頸癌関連HPVに自然感染した女性における血清中の中和抗体については情報が限られている。この研究では、217名のlow gradeのCIN患者から採取した血清で、HPV-16,-28,-31,-52,-58粒子に対する中和抗体を測定した。84名(39%)、35名(16%)、17名(8%)、1名(0.5%)が上記HPVの1タイプ、2タイプ、3タイプ、4タイプへの中和抗体を有していた。中和抗体の存在は、必ずしも同じ時に採取した子宮頸部サンプルでのHPV DNAの検出とは相関していなかった。中和抗体の抗体価は、多くが40-640に分布し、24か月後に再検された抗体価でも同様に維持されていた。再検されたHPV DNAとの関連もなかった。以上より、HPVの自然感染で誘導される中和抗体の抗体価は低レベルで、長期間持続することが判明した。
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