研究概要 |
主たる目的は、子宮頸癌予防のためのHPV型共通予防ワクチンの開発研究である。平成20年度の研究(a,b)を発展させた。a.HPV16,18,31,52,58の中和抗体の測定:CIN1/2 217例で陽性率は63%で16型(24%)、18型(11%)、31型(19%)、52型(21%)、58型(30%)であった。自然感染による中和抗体は低レベルで長期間維持した。b.L1VLPとL2ペプチドのキメラワクチンの開発:HPV16型L2アミノ酸18-38、56-75、96-115領域を16L1の430と433アミノ酸の間に挿入したキメラ抗原は、ウサギに免疫すると16型特異的な抗L1中和抗体と、交差性L2エピトープに対する抗L2中和抗体を誘導し、HPV18、31、52、58型の感染性偽ウイルスも中和した。 1.我が国のHPV感染に関わる基礎データ HPV DNA検査を行った2282例(細胞診正常1517例、CIN1 625例、浸潤癌140例)のデータを解析。相対危険度は、16/18/31/33/35/52/58型の7タイプが他のハイリスクタイプやローリスクタイプに比べて格段に高かった。現行のワクチンが感染を予防できる16/18型の陽性率は浸潤癌全体では67%あったが、若年者ほど陽性率が高ぐ、20代の浸潤癌では90%であった。 2.HPV偽ウイルスを細胞に感染させる場合のreporter遺伝子の発現について HPV51の中和抗体測定のために偽ウイルスを作成すると、感染細胞においてHPV51 prototypeではL2が細胞質内に存在し、reporter遺伝子が発現しない。本邦でクローン化されたHPV51(L2アミノ酸が2カ所異なる)ではL2は核内に存在し、reporter遺伝子が発現した。L2が核内に存在することが重要である。
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