研究課題
細胞の膜融合によって制御される生命現象としては、「受精」、「骨格筋や心筋の形成」、「ウイルスの細胞への感染」などが挙げられる。更に、全能性をもった培養細胞として知られる胚性幹細胞(ES細胞)を生体内に移植した場合には、頻度が低いものの、他の細胞との融合によって周辺の細胞を脱分化させることが報告されている。また、ES細胞だけでなく、体性幹細胞と呼ばれる間葉系幹細胞がもつ多分化能にも他の細胞との細胞融合による脱分化が関わっていることが報告されている。いくつかの細胞融合が知られているものの、その分子メカニズムは、SNARE系のタンパク質群によって制御されていう細胞内で起こる膜融合に比べ、ほとんどわかっていない。精子と卵の細胞融合によって生命の始まりとしての1個の細胞を形成する受精でも、その分子メカニズムは不明である。本研究では、哺乳動物の精子と卵子の膜融合に注目して、膜4回貫通型タンパク質ファミリーとして知られるテトラスパニンに属するCD9の機能解析を、蛍光タンパク質の1つとして知られるGFPとの融合タンパク質を卵特異的に発現させることによって行った。その結果として、受精の膜融合にはCD9を主要な構成タンパク質とする膜構造体(エキソソーム)が関わっていることを明らかにした。卵子から放出されるエキソソームは精子の融合能力を誘導する活性を有しており、本研究の成果は、受精の膜融合機構だけではなく、感染症や筋形成などの他の細胞融合をともなう生命現象の分子レベルでの解明にも繋がると考えられる。
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Proc Natl Acad Sci USA 105
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