研究概要 |
前年度までの組織免疫染色の結果から上咽頭がん患者ではSiah1はその誘導因子であるLMP1あるいはHIF1α、VEGFと相関傾向がみられたがその発現頻度は病期進行度があがれば高い傾向にあった。また上咽頭上皮細胞を用いた分子生物学的解析によりLMP1と低酸素環境自身の協調的相加刺激によりSiahlが誘導されることが判明した。 平成22年度は、更なる解析のため、レトロウィルス法によってLMP1を恒常的に発現する細胞を確立しこれらを免疫不全マウスの皮下に移植するシステムを最初に確立した。コントロール細胞およびLMP1発現上咽頭上皮細胞をヌードマウス皮下に移植、4週間経過し腫瘍が形成されることを確認した。これらの腫瘍形成したマウスを腫瘍採取12時間前に尾静脈よリピモニダゾール液を全身に還流させた後に腫瘍を採取した。採取した腫瘍は凍結切片を作成、ピモニダゾールによって標識された低酸素領域ならびにSiahl,あるいはLMP1,HIF1αと蛍光二重染色を行った。染色の結果、低酸素領域およびHIF1α陽性領域は比較的類似する部位が染色された。低酸素領域とSiah1,あるいはLMP1とSiah1は同一癌細胞内に染色陽性像を認めたため、マウスを用いた系列でも上記の仮説が証明された。この事から生体内では上咽頭癌が増殖する際にはLMP1の信号のみならず生体環境が形成する低酸素環境自身が腫瘍の形成に深く関与している事が示唆された。
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